マルチチャネル販売とは? 仕組みやオムニチャネルとの違いを徹底解説
欲しいものを探すとき、まずあなたはどのサイトを開きますか?Amazon や楽天市場、Qoo10 などモール型 ECサイトで検索するという事が多いのではないでしょうか。もしかすると、Instagram で探すこともあるかもしれません。
実際、ネットショッピングを利用する人たちの多くは、直接ブランドサイトを見ている訳ではなく、多くのプラットフォームで商品を探すようになりました。企業は自社のネットショップだけでなく、Instagram などのソーシャルコマースプラットフォーム、Amazon や楽天などのオンラインマーケットプレイスなど、無数の方法で顧客に商品を提供する必要があるということです。これが、マルチチャネル Eコマースです。ECビジネスのためのマーケティング戦略の一つとして注目されています。
この記事では、マルチチャネル販売をはじめてみたいというショップオーナーの方、またネットショップに興味がある方のために、販売チャネルの種類やマルチチャネル戦略のメリット・デメリットなどについてお伝えします。
目次
マルチチャネル販売とは?
マルチチャネル販売とは、複数のチャネル(集客する媒体、経路)を活用するビジネスの手法です。 複数のチャネルを使うことで、顧客との接点が増え、認知度の上昇や販売機会の増加が期待できます。例えば、実店舗とネットショップを組み合わせることで、ネットを利用しない顧客と、実店舗に来店できない顧客や主にネットで購買活動をする顧客と接点を持つことが可能になります。
販売者はあらゆるところで顧客とつながり、商品を宣伝できるようになります。商品を複数チャネルで並行して販売し、露出を増やすことで売上アップとビジネスの成長が期待できます。
マルチチャネル販売戦略で活用できる販売チャネルには、主に以下の6つのタイプがあります。
ネットショップ(自社 EC サイト)
自社または個人で所有するオンラインショップ。ブランドイメージを反映したサイトデザインや、独自クーポンの発行などネットショップとしてさまざまな機能を利用できます。これらのマルチチャネルを一つのプラットフォームに収束するために、自社ネットショップを運営することはより大切になっていると言ってもいいでしょう。信頼できる支払い方法を提供する自社 EC サイトは、良いブランドイメージにもつながります。
オンラインマーケットプレイス
Amazon や楽天など、出店型のプラットフォーム。通常、ほぼ無限とも言えるぐらいの商品数があるのが特徴で、あらゆる種類の商品を一箇所で、簡単に入手することができます。
モバイルマーケットプレイス
モバイル端末での閲覧を前提としたマーケットプレイスです。Amazon や 楽天 とは異なり、メルカリ、ラクマ、PayPay フリマなど、モバイルショッピングアプリの形で提供されています。
SNS プラットフォーム
TikTok、Instagram、YouTube など、ユーザーが日常的に使用する SNS でのショッピング機能を利用して販売することができます。SNS での販売はソーシャルコマースとも言われ、近年若者をターゲットとする Eコマースはぜひ取り入れたい販売チャネルです。
比較ショッピングエンジン
Google ショッピングや 価格.com など、複数商品の価格を比較して表示してくれる検索エンジンのことです。マーケットプレイスではそのサイト内で商品を購入することができますが、比較エンジンの場合ユーザーは他の EC サイトや小売サイトに移動して取引を完了させる必要があります。
実店舗
商品を販売するための物理的な店舗。
これらの販売チャネルは、それぞれ独自の顧客や市場を持っています。それぞれにメリットやデメリットがありますが、さまざまな販売チャネルを並行利用することで新たな顧客層の開拓につながります。市場規模に関係なく、すべてのショップオーナーがこの機会を利用して潜在顧客への露出を増やし、売上を伸ばすことができます。
マルチチャネルとオムニチャネルの違い
マルチチャネルとは、上記のように複数のプラットフォームで商品を販売することです。しかしそれぞれの販売チャネルは独立している状態を意味します。例えば、アプリとネットショップで商品を販売しているが、在庫はそれぞれ別で管理している状態です。
マルチチャネルの状態から、在庫データや顧客データを一元管理するようになると、クロスチャネル販売になります。在庫データを共有することで、販売機会の損出を防ぐことができます。
オムニチャネルとは、これらのマルチチャネル・クロスチャネルをさらに高度にしたものです。全てのデータや販売体験を統合した状態のことを意味します。
ネットで注文したものを実店舗で受け渡しを行うことや、実店舗に設置されているチラシをアプリで読み込むと、その商品をオンラインで購入できるなど、顧客がどのチャネルで購入するのかにかかわらず一貫した購買体験が得られるような販売方法です。
オムニチャネルは導入コストが高く、多くの場合は自社システムを構築する必要があります。オムニチャネルを導入する前に、ネットショップや実店舗での販売を合わせたマルチチャネル販売を導入することをおすすめします。そこで、それぞれのプラットフォームによる客層の違いや、売れ行きの商品についてのデータを集めることができるでしょう。
マルチチャネル販売の5つのメリット
マルチチャネル販売を行う最も明確なメリットは「新たな販売機会を獲得できること」ですが、他にもさまざまなメリットがあります。
01. 新規顧客の獲得
買い物客の行動はそれぞれ異なります。ブランドのショップサイトを直接訪問する人もいれば、複数のチャネルで検索して最も安価なサイトを探す人もいます。こうしたさまざまなタイプの潜在顧客を最大限に獲得するためには、マルチチャネル販売を通じて利用できる購入方法を増やしておくのが一番の得策です。
02. 競争優位性の向上
競合他社が利用している販売チャネルに自社が参加していないと、当然ながら販売機会を失うだけでなく、最悪の場合は競合が自社のターゲット顧客のシェアを完全に独占してしまうというリスクが生じます。つまり、顧客は欲しい商品があるときにあなたのサイトではなく、他社の販売チャネルで買い物をするようになるため、将来的な販売機会を自動的に失ってしまうことになりかねません。
03. 無料でマーケティングを実施
オンラインマーケットプレイスに参加すると、そのマーケットプレイスのマーケティングや技術を利用して自社ブランドを宣伝することができます。たとえば、Amazon のセール「プライムデー(Prime Day)」は年に一度のビッグイベントです。ここで自社ブランドの商品が注目されれば、その日だけでなく、将来的に数百万人の潜在顧客を獲得できる可能性が高まります。
04. ブランドの認知度向上
より多くの場所に出店することで、より多くの人にあなたのブランドを認識してもらえるようになります。その結果、ブランドに対する信頼が生まれ、将来的な販売の可能性が高まります。
05. リスクの軽減
多くの EC 事業者は、ある特定の販売チャネルに過度に依存しがちです。特に、そのチャネルが大きな売上を生んでいる場合はなおさらです。しかし、EC 業界は変化が激しいため、今は安定しているチャネルでも内部または外部的な影響で突如大きく変化することがあります。マルチチャネル販売でリスクを分散させておくことで、あるチャネルに影響が出た場合でも他の販売ルートを利用してビジネスを維持することができます。
マルチチャネル販売の3つのデメリット
マルチチャネル販売は効果的である反面、課題もあります。デメリットとして挙げられやすい3つの点を以下で見ていきましょう。
01. 複数販売チャネルの管理
マルチチャネル販売は、顧客情報とエンゲージメントをシームレスに保つための適切な小売プラットフォームなしでは困難です。プラットフォームによってはオムニチャネル(複数チャネル)との接続に対応していない場合もあるため、各チャネルを個別に管理する手間が発生します。Wix Eコマースは、さまざまな販売チャネルを一箇所にまとめて便利に管理できる優れたオムニチャネルプラットフォームです。一度ログインするだけで、ダッシュボードからすべてのチャネルを管理できます。
適切かつ信頼性の高い Eコマースプラットフォームを選ぶことで、商品の掲載、注文、返品などの管理が格段に楽になります。また、サーバーダウンなど EC サイトで起こりやすい障害への対策としても安心です。
02. 在庫管理
在庫管理が不十分だと、品切れや売れすぎの原因になってしまいます。これは売上に悪い影響を与えるだけでなく、顧客レビューの低下やロイヤルティの喪失につながる可能性があります。
この点、在庫管理機能を搭載した Eコマースプラットフォームがあれば、すべての販売チャネルで在庫を自動的に確保することができます。
03. カスタマーエクスペリエンス
販売チャネルを増やせば増やすほど、ブランドイメージと全体的なカスタマーエクスペリエンスの管理は難しくなります。ブランドが提供する体験の一貫性が薄れてしまうことで、企業としての評判や信頼度にも影響が及ぶためです。
さらに、チャネルを増やせば増やすほど、(チェックアウトされてから出荷まで)注文を迅速に処理することも課題となる可能性があります。
2023 年に注目のマーケットプレイス
Amazon が EC 事業者のためのトップマーケットプレイスであることは、ここでご説明するまでもないでしょう。月間52億のサイト訪問者数を誇る Amazon への出店を考えている方もきっと多いはずです。膨大な数のユーザーに商品を露出できるだけだけでなく、Amazon ではチェックアウトやフルフィルメントが簡単であるという点も、他のオンラインマーケットプレイスと比較した際の大きな利点です。
しかし、ブランドの一貫性を維持し、増え続ける競合他社に差をつけるのは容易なことではありません。
日本では Qoo10 が急成長しており、Z世代、特に 10 代〜 20 代の女性に圧倒的な集客力を持っています。特に、人気のキッカケとなった韓国コスメや、韓国食品などの 越境 EC を得意とする EC マーケットです。
米国では、eBay も Amazon に匹敵するオンラインマーケットプレイスで、毎月数十億人のユーザーがサイトを訪れます。Amazon がどちらかといえば従来型の小売サイトであるのに対して、eBay はネットオークションの導入により差別化を図っています。
その他、EC 事業者向けのマーケットプレイスとしては以下のようなオプションがあります。
※日本国外のサービスについては出店規制がかかる場合がありますので、各サービスの規約を参照してください。
日本
楽天市場:日用品からファッション、電化製品、食品までありとあらゆるものを扱うオンラインマーケットプレイス。はやくお得に貯まる楽天ポイントや、ポイント還元サービスなど、楽天ならではのキャンペーンもユーザーからの支持を集めています。
Yahoo!ショッピング:TポイントやPayPayでの支払いが可能な Yahoo!ショッピング。最大の特徴は、出店者に対する「初期費用」「毎月の固定費」「売上ロイヤルティ」が無料(但しそれ以外の決済手数料等は有料)であることで、ショップオーナーにとって参入しやすい総合型 EC モールです。
アジア
Qoo10:大規模セールの「メガ割」で認知度が急速に高まった Qoo10。コスメや食品などのカテゴリーが好調で、年間流通総額は毎年20〜40%ずつ拡大している注目の EC モールです。
AliExpress(アリエクスプレス):世界中の顧客に商品を販売したい中小企業に最適な人気のマーケットプレイス。AliExpress は独立した売り手がプラットフォームを利用して買い手に商品を提供する仕組みを取っており、しばしば eBay と比較されます。
Shopee(ショッピー):東南アジアおよび東アジアの消費者と販売者にサービスを提供する大手プラットフォーム。Shopee はラテンアメリカの数か国において、オンラインで商品を購入・販売したい事業者にもサービスを提供しています。
淘宝網(タオバオ):中国では言わずと知れた、中小企業や個人事業主のためのプラットフォーム。タオバオのサービスは、主に中国語圏の消費者を対象としています。
拼多多(Pinduoduo):農業に特化した中国最大のテクノロジープラットフォーム。Pinduoduo ではインタラクティブなショッピング体験を通じて、農家や流通業者と消費者を直接結びつける仕組みを構築しています。
JD.com:電子機器、携帯電話、コンピューターの販売に特化した中国の Eコマース企業。JD.com は世界最大のドローン配送システム、インフラ、世界に通用するプレゼンスを誇り、テクノロジーへの投資でも知られています。
欧米
Etsy(エッツィー):ハンドメイドやヴィンテージアイテム、クラフト用品に特化したユニークなマーケットプレイス。Etsy は現在では知名度も上がり、DIY を得意とする事業者にとっては欠かせない販売チャネルとなっています。(現在日本からの新規出店は不可能:Etsyペイメントに対応している国からのみ出店可能)
Trendyol(トレンディオール):2022年現在においてトルコ最大の Eコマースプラットフォーム。当初は、すべての人にファッションアイテムを提供することを目的としたショッピングサイトとして誕生しました。その後、Trendyol は提供する製品やサービスの範囲を拡大することで大きな成長を遂げました。
Allegro(アレグロ):ポーランドのマーケットプレイスで、東ヨーロッパでトップの Eコマースプラットフォームの1つです。Allegro はヨーロッパで4番目に大きなオンラインマーケットプレイスであり、先進的な技術を導入している事業者としても知られています。
Walmart Marketplace(ウォルマートマーケットプレイス):小売大手のウォルマートが提供するサービスで、ウォルマート限定の商品を扱う一方、Amazon や eBay のようにサードパーティの出品者が商品を出品できます。Walmart Marketplace で販売することで、多くの人にあなたの商品を知ってもらうことができます。
Target Plus(ターゲットプラス): 米国のディスカウントスーパーである Target が2019年2月に立ち上げたオンラインマーケットプレイス。Target Plus は現在、サードパーティの出品者の商品と Target の商品をペアリングする招待制のマーケットプレイスとなっています。
Wayfair(ウェイフェア): 家具や家庭用品の販売で桁外れに有名になったアメリカの Eコマース企業。Wayfair は家具や家庭用品の販売で圧倒的な知名度を誇り、「家庭用品市場の Amazon」とも称されています。
マルチチャネル販売戦略を最適化する方法
マルチチャネル販売はオンライン販売を強化するためには効果的で、そのパフォーマンスも実証されています。しかし、導入を進める中で利益が損なわれないようにするためには適切な戦略が必要です。
それぞれのチャネルを整理し、顧客のニーズに応じて調整していくことで、各チャネルのメリットを有効活用して顧客満足度を上げていく必要があります。
マルチチャネル販売でもう一つ重要なことは、在庫管理とオペレーションを統合することです。チャネルを増やすと、ロジスティクス上の課題がさらに増えることになります。在庫を常に監視することで、売りすぎや在庫不足の可能性をできる限り減らし、売上アップを図ることができます。
マルチチャネル販売に対応した Eコマースプラットフォームでは、在庫を同期させ、すべてのチャネルのオペレーションを一元化することでこうした問題を軽減することができます。また、会計、出荷、フルフィルメントといった各機能と在庫管理を一箇所で便利に行うことができます。Wix Eコマースなら、商品が売れた後の梱包や配送をすべてサプライヤーに一任できるドロップシッピングサービスも利用可能です。Wix サイトとドロップシッピングサービスを接続して、簡単にオリジナルのプリント商品を販売できます。詳しくはこちらのブログ記事もお読みください。
在庫とロジスティクスの調整を行うためには、まずデータを一元管理する必要があります。各チャネルを回って情報を収集するのではなく、データの一元管理が可能なレポートツールに投資することを検討しましょう。Wix アクセス解析は、Wix で制作したすべての EC サイトから役立つインサイトを収集し、ビジネス上の意思決定をサポートします。顧客の訪問、注文、購買履歴などの情報を一箇所でまとめて閲覧することができます。
最後に、マルチチャネル戦略ではマーケットプレイスを販売に最適化する必要があります。マーケットプレイスに参加し、いくつかの商品を掲載すればすぐに売上が期待できるわけではありません。マーケットプレイスをテストし、必要に応じて変更を加え、さらに最適化することでより大きな成果を上げることができます。
そのために必要なのが、定量的なデータと顧客からのフィードバックです。データは常に正しいとは限らないため、顧客からも直接意見を収集してショップ運営を改善していきましょう。アンケート、フォローアップメール、満足度評価などを通じて、顧客からのフィードバックを収集することができます。
Wix のマルチチャンネルキャンペーン(Wix Eコマースダッシュボードから利用可能)のようなツールを活用すれば、メール、Facebook、Instagram などの複数のチャンネルで商品の情報をさらに広めることができます。ストア商品へのトラフィックを増やしてカスタマージャーニーを追跡し、ユーザーがどこで商品を購入しやすいのかや、その理由を探ってみましょう。
ブランドイメージを維持しながら販売拡大する方法
マルチチャネル販売の最大のメリットは、ブランドの認知度を高めることです。
主要チャネル(実店舗、オンラインマーケットプレイス、自社サイトなど)以外の販売チャネルを追加することで、まったく新しい潜在顧客にブランドを知ってもらうことができます。こうしてブランド認知度を向上させていくことで、最終的にすべてのチャネルへのトラフィックを増加させ、市場での存在感を高めることにつながります。
しかし、さまざまなチャネルに商品を掲載することでブランドアイデンティティが失われるリスクもあります。すべてのチャネルがあなたのビジネスに適合するわけではないということを認識し、チャネルの優先順位をつけることが重要です。
チャネルを選ぶ際には、「一貫したブランドメッセージを発信し続けることができるか?ターゲットとなる顧客層にリーチできるか?」ということをしっかりと考慮しましょう。
まとめ
適切なマーケットプレイスを選ぶことができれば、自社のネットショップの延長としてビジネスに恩恵をもたらしてくれることでしょう。すべての商品をすべてのマーケットプレイスにとにかく出品するのではなく、どの商品が価格競争に打ち勝ち、独自のステータスを維持できるかを見極める必要があります。
また、すべての販売チャネルでブランドの一貫性を維持することも重要です。ロゴ、配色、文章のトーン、画像などは、どこに出品する際にも常にブランドイメージに合ったもので統一しましょう。強力で一貫したブランドアイデンティティを維持することで、どのチャネルでも同じブランドであることをアピールし、顧客ロイヤルティを築くことができます。
ネットショップの運営を成功させていくためには試行錯誤が必要です。このブログで解説したマルチチャネル販売に加えて、成功する EC サイトの作り方や売れる商品説明の書き方を参考にしながら、ECサイトを成長させていきましょう。
編集者:Miyuki Shimose
ブログ コンテンツマネージャー