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世界中の理髪店から注文が来る岡山県の中村商店。越境ECの成功に必要だったことは?

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Wix で作成された「中村商店」のホームページ

理髪店で散髪する際、毛髪の付着を防ぐためのお客さまが着用する布をカッティングケープといいます。このケープに着目し、高いデザイン性と耐久性を備えた製品を販売しているのが、Wix で作成されたオンラインショップ「Barber & apparel 中村商店」です。


同サイトで販売されているカッティングケープは、いずれも優れたデザインと品質で世界中の理髪店から注文が来ています。同サイトを運営する中村商店は、なぜカッティングケープに着目し事業を始めたのでしょうか。また、オンラインショップを構築するツールとして、なぜ Wix を選んだのでしょうか。中村商店代表の中村浩茂様に伺いました。



「中村商店」の中村浩茂さんと取材者の櫻井泰斗


きっかけは、理容師としてカッティングケープに抱いていた「不満」


ーーまず、中村さんの事業である 「中村商店」について教えて下さい。


中村商店は、ブランディングツールとしてカッティングケープ等を世界中に企画販売しているブランドです。カッティングケープとは、散髪の際にお客さまへの毛髪の付着を防ぐため着用していただく布のことです。2014 年に事業を立ち上げ、日本だけでなく世界中の理髪店からご注文をいただいています。



ハサミを持っている中村浩茂さん


ーーこれまでに何ヶ国くらいから注文がきているのでしょうか。


海外からの注文の多くはアメリカです。他にはヨーロッパ諸国、ドバイ、台湾、韓国など。最近ではオーストラリアやシンガポールからの問い合わせや注文が増えていますね。珍しいところだとペルーから注文が入ったこともあります。地域でいえば、おそらくアフリカ諸国と南極大陸以外のすべての地域に出荷したことがありますね。


ーーグローバルなビジネスですね。カッティングケープの企画販売事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。


現在も私は理容師として理髪店を営んでいます。理髪店では散髪の際にカッティングケープを使用します。しかし、私はそのカッティングケープに不満を感じていました。ただの消耗品として扱われており、デザイン性に乏しく、耐久性が低いものが多かったのです。そんな折、私の地元である倉敷市児島からご来店される、繊維業界で働くお客様に相談したところ、岡山の技術で良いものを作ってみようか、という話になりました。これが、カッティングケープ企画販売事業を始めたきっかけです。


事業立ち上げのタイミングを決める上では、理容業界を取り巻く環境も考慮しました。2010 年代初頭くらいから、ヨーロッパやアメリカを中心にバーバーショップ(理髪店)が男性顧客にクラシックなヘアスタイルを提供し、盛り上がりを見せていました。そんな流れの中で、よりモダンにアップデートされたバーバーショップが出現し、リブランディングが行われ始めたのです。デザイン性が高く、店舗ブランディングに貢献できる高品質なカッティングケープは、ニッチではありますが、世界中のバーバーショップに需要が生まれています。そのような見通しもあり、事業の立ち上げに至ったのです。



中村さんのケープを使って散髪をしている男性


ーー最初から世界を見据えて事業を始められたのですね。


とはいっても、まずはどれくらいのニーズがあるのかをつかまなければなりません。そこで、最初は Facebook や Instagram といった SNS を活用して情報発信を行いました。すると、国内外から多数のお問い合わせがあったのです。当初はダイレクトメッセージでお客さまと個別にやりとりをして、日本国内は銀行振込、国外は PayPal を使って取引をしていました。


ただ、この方法では手間がかかって効率が悪く、ビジネスが拡大する上で無理が生じてくることが想像できました。越境EC を視野に入れつつ、複数言語で販売ができるサイトを立ち上げようと考え、Wix を活用してオンラインショップ「Barber & apparel 中村商店」を開設したのです。



越境EC を視野に入れたサイト制作 - Wix を選んだ決め手は「ノーコードとPayPal 対応」


ーーWeb サイト制作プラットフォームは他にもありますが、なぜ Wix をお選びいただいたのでしょうか。


ポイントは 2 点あります。まず、越境EC サイトが手軽に作れることです。Wix はノーコードでの Web サイト制作が可能で、テンプレートをカスタムすれば外注することなく簡単に自分で構築できるのが魅力です。


実は私は 2004 年の理髪店開業当時、自分で Web サイトを構築した経験があります。インターネットが好きだったので、HTML や CSS などを勉強して制作したのですが、やはり時間はかかりました。ノーコードで制作できる Wix は、Web サイト制作の知識を補ってくれるので、とても使いやすいと思います。


Wix を選んだもう 1 つのポイントは、越境EC で一般的な Web 決済サービスである PayPal での決済が可能であることです。越境EC サイトを作成できることを売りにした Web サイト制作プラットフォームはいくつかありましたが、私が調べた当時では PayPal の導入が可能なのは Wix だけでした。



「中村商店」のホームページ


——決済がスムーズになったこと以外に、Web サイトを立ち上げてよかったことはありますか。


発送業務がしやすくなりました。それまでは DM でのやりとりの中で、お名前や住所など発送に必要な情報をお客さまにお聞きしていたんです。しかし、DM には入力フォームがあるわけではないので、必要な項目が抜けてしまい、再度お聞きする手間が発生することもありました。また、決済用のリンクを先方にお送りしてもなかなか決済が進まず、発送準備ができているのに商品が送れず困ることもありました。


Web サイトで注文を受けるようにしたことによって、入力事項の漏れがなくなりましたし、決済していただいてから発送準備にとりかかれるようになったので、様々なトラブルがなくなりました。



カッティングケープ、ダンボール箱とDHLの袋


Wix はプラットフォーマーの立場から事業者のビジネスをサポートしてくれる


ーーWix には、オンラインショップやブログ、予約、サブスクリプション、デジタルコンテンツ販売、マーケティングツールなど、様々な機能があります。中村商店様がご利用いただいている機能について教えてください。


「Barber & apparel 中村商店」で活用しているのは、オンラインショップ、ブログ、マーケティングツールです。特にオンラインショップ機能は、海外販売においてなくてはならない機能です。


印象的なのは、私たち事業者のビジネスを、Wix がプラットフォーマーの立場からサポートしようと熱心に取り組んでくれていることです。


たとえば、マルチリンガル機能です。翻訳したい言語を追加するだけで、ページ内が自動翻訳されるようになりました。簡単に多言語対応できるようアップデートされたことで、日本語しかできない私も越境EC に取り組みやすくなりました。また、翻訳自体もアップデートされ、かなり自然なニュアンスになっている印象です。それまでは、別に翻訳した英文を元に、ページを複製していたのですが、この機能によってそれらの手間暇が大きく効率化されました。



カッティングケープのECページ


ーーたしかに、海外EC サイトの日本語翻訳に違和感を覚え、購入をためらうことはよくあります。


越境EC では、こうしたちょっとした言葉のニュアンスや違和感がお客様からの信頼を損なうことにつながり、離脱を招いてしまいます。とはいえ、ニュアンスまで正確に翻訳するのは事業者にとっては大変な作業です。こうした点を Wix 側のアップデートで対応していただけるのはとても心強かったです。


他にも、最近では欠品した商品を再入荷した際にお客さまへ自動通知される機能がついたり、製品原価を記述する項目が追加されたりと、アップデートで機能がどんどん拡張されています。特に原価入力項目が追加されたことで、利益率がわかりやすくなったのはよかったです。お客さまの情報とかけ合わせることで、CRM ツールなどを別途用意しなくても、Wix の中でビジネスが完結できる可能性も見えてきました。


ーーサイトを拝見すると、Wix ストアだけではなく、Wix ブログを活用して積極的に情報発信も行っておられますね。理容トレンドの分析やマーケティング手法の紹介、経営論、ビジネスの発想法に関する記事など、テーマは多岐にわたる印象です。


ブログは主に理容業界に向けて書いています。私もかつてはそうでしたが、理容師は職人気質の方が多く、マーケティングのことは深く考えない方が多いんですよ。ただ、いろいろと本を読んだり調べたりする中で、マーケティングの考え方は必ず理容業界の皆さんにも役立つものだと思ったんです。だから、ブログを通じて少しでもアウトプットして、理容師の皆さんのビジネスに貢献したいと思っています。それに、理容業界の売上が上がることで、当店の売上も上がるわけですからね(笑)。



Wix の効果でコロナ禍の影響を許容範囲に止められた


ーーWix は中村商店様のビジネスにどの程度貢献できているでしょうか。Wix を導入した効果について教えてください。


Wix を経由した売上は、2021 年に全体の 38% になりました。平均購入価格は 28,000 円です。2022 年は海外からの発注も戻ってきている現状です。新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けて業績が低迷した 2021 年でしたが、許容範囲に留められたと思います。


いくつか例を前述しましたが、これらの他にも Wix には日々さまざまなアップデートがあります。それらの機能をサイト上に反映することで、中村商店の Web サイトは進化し、より良いサービスを作る事ができていると感じています。今後も、さらに的確な顧客対応が可能になるのではと期待しています。


ーーこれから中村様が Wix を活用して挑戦したいことがあるとお聞きしました。


世界中の様々な理髪店を訪問して、彼らのストーリーを聞いて、Wix ブログで情報を発信していきたいと考えています。世の中には本当にいろいろな理髪店があり、なかには風変わりなお店もあったりして、おもしろい世界なんです。そういった世界の個性的な理髪店が、中村商店を通じてお客様になってくださったことで、私自身もいろいろなことを知る機会が増えたんです。コロナ禍が収まれば、海外のお客さまにも会いに行きたいと思っています。


また、私は現在も理容師として、地域のお客様の散髪に勤しんでおります。実店舗の方では、オンライン予約機能である Wix ブッキングを本格的に利用していきたいと考えており、整備を進めています。UX (ユーザー体験)の高い予約サービスを作るだけではなく、顧客関係管理システム(CRM)もきちんと管理していきたいです。オンライン予約システムは、高度な知識や複雑な実務が必要です。これは、スモールビジネスを手がける私にとって高額なコストとなるため、今までは導入できずにいました。ただし Wix を使えば、このようなバックオフィスのサポートもしてくれるのではないかと期待しています。



Web サイトを作る行為は、自らを客観視する良い機会になる


ーーこれから Web サイトを立ち上げようとする方に、ぜひアドバイスをお願いします。


Web サイトの立ち上げは、自らを客観視し、構造的に物事をとらえることに貢献してくれます。そこに訪れるユーザーが何を欲しているのか、どのような成果を得てサイトを離れるのか。これらを追体験しながら Web サイトを作ることは、とても有意義だと思います。


そして、Wix はノーコードで直感的にサイトをデザインできるのが圧倒的にやりやすいツールです。テンプレートをカスタムして、写真を変えたりするだけで、見栄えのいいデザインがすぐに作れます。


もし、何から手を着けていいかわからないのであれば、好みの Web サイトを探すところから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、私は Pinterest というサービスで、好みのデザインを探しては保存しています。そこから色のパターンやレイアウト、画像処理の傾向などを参考にして、Wix のテンプレートをカスタムしてみる。きっと自分の好みのサイトが、手を動かしながら見えてくるはずです。


「思い立ったが吉日」といいます。衝動が冷めやらぬうちに始めてみてはいかがでしょうか。


ーー理容師として地域に貢献する傍らでグローバルな視点も持つ中村様から、たいへん刺激的なお話をお聞かせいただきました。本日はありがとうございました。



帽子をかぶっている中村浩茂さん

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取材者の櫻井泰斗

取材者:櫻井 泰斗

マーケティグディレクター

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