2022年5月17日10 分
最終更新: 5月19日
奈良県で靴下の製造販売を行っている増田靴下。同社は 2001 年に Webサイト を開設したものの、10 年以上放置された状態。ページとしては存在していたものの、ビジネスへの影響はほとんどない状況でした。
そんな Web サイトをリニューアルする際に、増田靴下が活用したツールが Wix でした。再始動した 「MSC-SHOP」では、オリジナルソックスの販売を中心として精力的にマーケティングを展開。その結果、これまで関西圏内に閉じていた販売網が広がり、全国からお問い合わせが倍増しました。
Wix でこのWeb サイトを制作し、運用も担当されている増田 誠志郎 様に、Wix のメリットや制作する上でのこだわり、さらに製造業が抱える課題に Wix の各機能がどう貢献しているのか、お話を伺いました。
ーーまず、増田様の家業でもある、MSC-SHOP について教えてください。
奈良県で 1956 年に創業した靴下製造会社、増田靴下が運営するオンラインショップが、MSC-SHOP です。増田靴下はもともとカジュアルソックスを作っていましたが、2 代目となる私の父が商品をスポーツソックスに絞る経営判断をし、現在まで運営しています。Wix で作られたこのオンラインショップ では、サッカーや野球といった各種スポーツソックスが購入できる他、チーム名や背番号などを入れたオリジナルソックスの製造も行っており、小ロットから対応しています。
ーーお父様のビジネスをサポートする形で、事業に携わっていらっしゃるとお聞きしました。
実は私の本業はまた別にあり、Web 制作や写真・映像制作、コンテンツ開発などを全般に行う会社を経営しています。その知識を生かして、実家の家業を手伝うことができればという思いがあり、父の経営する会社のオンラインショップの立ち上げや、サイトの運用をしているような状況です。
ーー増田様が増田靴下の Web サイトをリニューアルすることになった経緯を教えてください。
増田靴下の Webサイト 自体は、私がまだ社会人になる前の、2001 年から存在していました。ただ、いわゆる「昔ながらのホームページ」が作られたままの状態であり、例えばスマホ向けにレスポンシブ対応もされていなかった。長い間、ずっと放置されていたのです。もっとも、時代背景を考えると、ひとつの町工場の Webサイトとして、それは仕方がないことでした。
当時は今のように個人でネットショップを簡単に始められる環境ではなく、ECサイトといえば大手のショッピングモールに出店するのが一般的でした。その Web サイトでも注文は受けていましたが、そもそもカート機能がないので、受付は電話かメールのみ。過去にもらって引き出しの奥にある名刺のように、探せば見つかるような、会社の概要が書いてある程度のページでした。Webからの問い合わせや注文は、ほとんどありませんでした。
私がそのことに気づいたのは、2012 年頃のことです。当時はスマホが世の中に広まりだした時期。あるとき、「そういえば実家の会社の Web サイトがあったな」と見てみたところ、スマホ対応がなされておらず、パソコンからのアクセス前提の、時代にそぐわないものになっていました。
私自身スマホを使い出したタイミングも早かったほうでした。これからモバイルからの閲覧が増えてくることを予感していたので、何気なく家族にリニューアルを提案してみたのです。
ーーそこで増田様はリニューアルに着手されたわけですね。その際には多くの選択肢があったかと思いますが、Wix をなぜ選んでいただいたのでしょうか。
私は、Wix というサービスを昔から知っていました。実は私は学生時代にアパレルブランドを立ち上げたことがあったのですが、そのとき Wix を使ってブランドサイトを制作したんです。たしか、当時好きなブランドのサイトが Wix を使って作られており、自分もデザインにこだわったサイトが作れるのではないかと、そこから興味を持ったと記憶しています。
ーーWix の第一印象はいかがでしたか。
Web 制作に関する専門知識がなくても、完成度の高いページをノーコードで制作できて、操作も直感的でわかりやすい。たとえば WordPress だと、ちょっとこだわろうとするとコーディングが必要になったりします。私自身は制作会社を経営しているので、IT の知識は多少ありますが、コーディングについては専門外です。そうであれば Wix は良い選択肢なのではと考えました。
ーーWeb 制作が本業の増田様からご覧になって、制作会社にはない Wix のメリットはどこにあると思われますか?
初期コストを抑えられることと、制作のスピード感。この 2 点は Wix ならではのメリットです。わたしは自分で制作会社を経営しているのでわかるのですが、外注すると、どんなにスタッフを絞ってもデザイナーとコーダーの2人は必要で、その分の費用がかかります。納期についても、お客様と制作会社側で、打ち合わせを重ねていく制作プロセスになるので、公開まで最低でも 1ヶ月から 2 ヶ月はかかるでしょう。一方で、 MSC-SHOP は私 1 人で制作して、2 週間程度で公開しました。
もちろん、制作会社に依頼して Web サイトを作ることのメリットはあります。何度もヒアリングがあり、必要な機能について議論を繰り返し、作り込める。より細かいところにこだわりたい方はよいかもしれません。ただし、わたしの実家のような町工場がそこまでお金と時間をかけられるケースは少ないのが現状です。そうであれば、少しの知識とスピード感を持ってサイトを立ち上げられる Wix が、最も理にかなっていると思います。
ーーかけられる予算や時間などのリソースによって、適した方法は変わってくるということですね。
もうひとつ、Wix を選んで良かったと思うことがあります。それは修正時の速さです。制作会社に外注した場合は、修正したいときも依頼してやってもらう必要があります。そのたびに、時間とお金がかかってきてしまう。その点、Wix なら修正も簡単なので、直したいと思ったらすぐに自分の手で直せるのが利点です。例えば、新しい商品を追加する際には、現場で写真を撮って Wix にアップロードすれば数分で完了します。同じことを外注しようとすると、短くとも 1 週間はかかるでしょう。これはサイト立ち上げ時には気づかないメリットですが、継続的に Web サイトの運用していく中で、大きな差として出てきます。
ーー次に、MSC-SHOP をどのようなプロセスで作られていったのか、その流れを具体的に教えていただけますか。
はじめに、もとの Web サイトから必要なコンテンツを見極め、不足していると思われる情報は私の方で足していきました。たとえば、オンラインショップがなかったので、Wix のストア機能を入れようということになりました。このプロセスについて、本業で制作するような大掛かりなサイトの場合は、ワイヤーフレーム(レイアウトを定める設計図)を作成するのですが、Wix で制作する上ではサイトマップ(全体のページ構造)を考える程度で十分でした。その後は、各ページを作成した後、自分自身で制作した写真や映像を組み込んでいきました。特に映像を簡単に埋め込めて、レスポンシブで再生できるギャラリー機能は、情報を伝える上で効果的です。
ーーWix のブログ機能も活用されている印象です。検索からの訪問者を増やすために、増田様はどのようなことを意識されていますか。
MSC-SHOP で閲覧数が多いのはオリジナルソックスの説明ページです。ここはビジネス的にも重要なので、特に SEO に力を入れて、検索上位に表示されることを目指しています。まずは「オリジナルソックス」や関連するキーワード検索で、上位に出てくるサイトを研究して徹底的に読み込みます。その後、それらのサイトよりも内容が濃いコンテンツを執筆し、 Wix ブログにて発信します。継続的な努力の成果が出て、オリジナルソックスの検索順位は上位を維持できています。Wix では SEO 対策専門のツールがあることも、この結果につながっていると考えています。
ーーSEO 対策以外に、製作時に意識した点やこだわりなどがあれば、お聞かせください。
検索流入も大事ではありますが、同じくらい大事なのは、お客さま目線に立って使いやすい Web サイトになるよう心がけていくことです。たとえば、MSC-SHOP ではオリジナルソックスの申込用紙のテンプレートを、PDF でダウンロードできるようにしています。お問い合わせフォームもあるのに、なぜこのような申込用紙を用意しているのか不思議かもしれませんが、それはお客さまの中にはITが苦手な方もいらっしゃるからです。実際には印刷された申込用紙に、手書きで情報が入力されたものが、FAX で送られてくることもあるのです。
ーー確かに、申込みフォームのページがあればそれで十分だと思ってしまいがちです。
Web サイトを作り込んでいくと、つい「これくらいわかるだろう」と考えてしまうんです。FAX の例はわかりやすいですが、自分は気づかずとも、人によっては「わかりにくい」と感じているところがあります。MSC-SHOP では、そういったわかりにくさを意識して排除していくことをこころがけています。例えば、靴下について専門知識がない人にもページを見てもらう。その人が見てわからないと感じるならば、他にもわからないと感じる人がいるということなのです。
ーーWix で Web サイトを制作した前後で、事業にはどのような変化があったか教えて下さい。
我々のような小さな町工場にとって、これは画期的なことです。そしてこの経験から、製造業全体が抱える課題が見えてきました。今まで、小さな町工場は、大手メーカーの下請け仕事をすることが一番収益性が高く、それをビジネスモデルとしていました。増田靴下もその例にもれず、そういった大手からの受注を中心にして事業を行っていました。いわば、「受け身」のビジネスだったわけです。
ところが、近年は大手メーカーの生産拠点が中国などに奪われています。国内での靴下の生産は下火になり、我々の受注も減少しております。こういった市況の中、大手メーカーが倒産してしまったらなにが起きるかわかりますか。その取引先のみで事業を行っている町工場も、一緒に倒れてしまうのです。これは日本の製造業全体の大きな課題といっても過言ではありません。多くの町工場は、日々大きなリスクを抱えながら経営されています。
この課題を打破できるのが、インターネットです。増田靴下も MSC-SHOP を開設したことで、収益の軸が大きく変わりました。それまでは奈良県内のメーカーとの仕事に限られていましたが、現在では Wix で作った Web サイトを通じて、全国から注文が舞い込むようになったのです。さらに、大手広告代理店や有名な音楽レーベル、大手アパレル小売販売などからも直接問い合わせがあり、新たな受注につながっています。小さな町工場にとって、これは既存のビジネスモデルの、画期的な転回なのです。
ーー今後はどのような事業展開を考えていますか。
現在は、IoT などテクノロジーを活用したスポーツソックスの開発や、すべりにくい介護用ソックスの開発などを進めています。日本全国に販路が開拓できたので、次は海外展開も視野に入れて準備をしています。その際は、Wix のマルチリンガル機能が使えるのではないかと期待しています。
ーー最後に、これから Wix を使ってみたいと考えている方にメッセージやアドバイスをいただけますか。
Web サイトでは、自分たちが発信したい情報ではなく、お客さまがほしい情報が何なのかを意識して発信することが大切です。たとえば、MSC-SHOP でもブログ記事は何度も修正を加えていますが、それはお客さまからのフィードバックや問い合わせ内容をもとにしています。そうやって有益な情報を発信していれば、見てくれる人が増えて、結果的にビジネスに貢献するサイトになると思います。これを継続し、何度も修正を加えていくことで、サイトはより完成度の高いものになります。私たちが Wix で体験した Web サイトの可能性とその広がりを、他にも多くの方に感じてほしいですね。
ーー奈良県の小さな町工房が、自ら Web サイトを開設し、日本が抱える製造業の課題を乗り越えていく。他の事業者の方にも非常に参考になる内容ですし、また勇気づけられるお話でした。ありがとうございました。
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取材者:櫻井 泰斗
マーケティングディレクター