ミッションステートメントとは? 作り方と有名起業の事例20選
ミッションステートメントとは、企業の行動指針のことです。
個人でも企業でも、ビジネスを立ち上げるときは「なぜその事業をはじめるのか」「どういった意義があるのか」という目的意識が必ずあるはずです。せっかくの目的意識をより広く理解してもらうために、漠然とした目的意識を、プロフェッショナルなミッションステートメントに昇華し、広告やホームページで宣伝しましょう。
ぜひこのガイドでミッションステートメントの作り方を知り、世界的に影響力のある企業が打ち出しているステートメントの事例を参考に、自身のミッションステートメントを作成してみましょう。
この記事では企業、個人の 2 種類に分けてそれぞれのミッションステートメントの概要と作り方を解説します。
目次
ミッションステートメントとは?
ミッションステートメントとは、「企業の行動指針」のことです。経営理念を実現するための判断基準として具体的に定めます。抽象的な「理念」を、具体的に「実行」に落とし込みやすくするために作成する文言が「ミッションステートメント」です。 重要なのは、社内と社外に「価値観」共有することです。近年では、キャッチーで明快なミッションステートメントを PR として活用し、企業のビジョンに共感するステークホルダーを惹きつけることにも利用されています。
自分のモチベーションを高め、一貫した事業を行っていくためだけでなく、従業員や潜在顧客に自社が目指すものを明確に伝えるためにも、ミッションステートメントは重要な役割を果たします。会社概要ページにミッションステートメントを掲載しておくことでビジネスの信頼性も高めることができます。
01. ミッションステートメントとビジョンステートメントの違い
よく混同されるものに「ビジョンステートメント」があります。両者の主な違いは次の通りですが、会社にとってはどちらか1つのみを掲げていたり、これら2つを合体させていたりと利用の仕方はそれぞれ異なります。
ミッションステートメント:企業や社員が共有する存在理由や使命、解決したい問題などを行動可能なレベルまで具体化したもの。
ビジョンステートメント:企業がその意義や目的を果たすために進むべき道筋を示すより抽象的な目標や未来の計画。長期的な戦略の指針となります。
ビジョンステートメントをはるか高いところにある屋上の噴水にたとえると、ミッションステートメントは屋上にたどり着くまでの長い階段、といったところになるでしょう。
02. ミッションステートメントの役割 : 3つの目的
この記事では引き続き、ミッションステートメントに焦点をあててその内容と作り方について詳しく見ていきます。まず、ミッションステートメントが持つ3つの目的は次の通りです。
価値判断の基準を明確にする
ミッションステートメントは、日本に直訳すると「使命(ミッション)の声明(ステートメント)」です。企業が果たすべき使命を文書化し、共通の認識を広めるために用いられます。
たとえば、「環境にやさしく行動する」というミッションに対して、ある人は「ゴミ拾いをする」と答え、ある人は「木を植える」と言うかもしれません。こうした漠然とした理念や価値観をはっきりとした言葉でまとめることで、行動すべき基準が明確になります。
従業員に会社としての方向性を示す
組織としてビジネスを行う場合は、従業員が同じ目的のもとで行動することが重要です。企業の方針と、理想とする意思決定の基準をミッションステートメントで「共通言語」として示すことで従業員の足並みを揃えることができます。
企業理念のアピール
ミッションステートメントは企業の対外的なイメージ向上にも役立ちます。広告やマーケティング活動はもちろん、IR などでもミッションステートメントを通じて事業の根本的な目的を株主や投資家に効果的に示すことができます。
03. ミッションステートメントに含めるべき要素
企業により形式は大きく異なりますが、ミッションステートメントには大きく分けて次のような要素を含めるのが良いでしょう。以下を参考にして自社の目指すものや強みを考えてみてください。
顧客との関係
製品・サービス
市場・マーケット
技術(テクノロジー)理念
企業理念
企業の強み
社会的責任・自然環境への配慮(パブリックイメージ)
企業のミッションステートメント作り方の手順
では、実際にミッションステートメントはどのようにして作成すればよいのでしょうか?重要なのは、経営者の独断で決めるのではなく、事業に関わるチームメンバー全員でミッションステートメントを考えるということです。以下でそのポイントを3つ見ていきましょう。
01. プロジェクトチームを作る
ミッションステートメントは、企業の在り方を世間にアピールするための重要な文書です。ひとつの部署だけでクローズドに作成するのは避け、複数の部署・役割のメンバーを集めてミッションステートメントの作成担当チームを結成しましょう。それぞれ違った立場のメンバーで意見交換を行うことで、一方向に偏らない客観的なメッセージを作成できるようになります。
02.強調したい要素を特定する
チームを結成したら、さっそくミッションステートメントの骨組みを考えます。以下のような要素を念頭に置いて、自社の特徴とアピールポイントを振り返ってみましょう。
企業としてそのミッションを達成できるか?
組織内でモチベーションを維持できる内容か?
自社の在り方をあらわすユニークな内容に仕上がっているか?
誰でも覚えやすい内容か?
03.要素を文章化する
最後に、上記のステップで作成した骨組みに従って、ミッションを文章化していきます。社会に発信することを念頭に置いて、ユーザーや消費者に共感してもらいやすい魅力的な文章に仕上げましょう。長い文章で詳細に説明するのではなく、1~2行でシンプルに存在意義を伝えられる短いキャッチフレーズを作ることを意識しましょう。
納得のいくミッションステートメントが完成したら、企業ホームページに追加してクライアントやユーザーに周知することを忘れずに。
企業のミッションステートメント 具体的な事例 20 選
ミッションステートメントには企業の独自性や目指すものが色濃く反映されています。以下では、日本でもなじみの深い有名企業 20 社のミッションステートメントを取り上げてご紹介します。
01. Wix
思い描いた通りのホームページを作成しビジネスをオンラインで拡大
Wix はイスラエル発の企業で、誰もが理想のホームページを作成し、ネット上で活躍できるように、Web サイト制作のプラットフォームを提供しています。ユーザーがオンラインでビジネスを成長させ、目標を達成することに貢献することが、Wix の目的です。Web 制作プラットフォームの先駆者となった今も、誰もが本格的なホームページを作成できるよう最新の機能の開発と提供を続けています。
02. Amazon
地球上で最もお客様を大切にする企業になること
Amazon は顧客がより求めやすい価格で、豊富な品揃えの中からほしいものを見つけられるよう、サービスをより便利にするための新たな方法を常に模索しています。
03. スターバックス
人々の心を豊かで活力あるものにするためにー ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから
スターバックスはコーヒーを起点に、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくることを目指しています。
04. トヨタ
わたしたちは、幸せを量産する。
トヨタのサイトでは、MISSION(わたしたちは、幸せを量産する)と VISION(可動性*を社会の可能性に変える)の2つがはっきりと示されています。
*可動性の読みは「モビリティ」
05. ファーストリテイリング
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
ユニクロなどの小売店舗を展開するファーストリテイリングは、良い服を着る喜びを世界中に提供するというミッションを掲げています。
06. ソニー
クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。
ソニーは感動を共創することをテーマに、自社の「パーパス(存在意義)」としてこのステートメントを掲げています。
07. Nike
世界中のすべてのアスリート*にインスピレーションとイノベーションをもたらすこと
NIKE は創業以来、世界中のアスリート*に向けて着心地がよく創造性あふれるウェアを提供しています。
*体ひとつあれば、誰もがアスリートだ。
08. Twitter
言語や文化などの障壁をなくして、思いついたアイデアや見つけた情報を一瞬にして共有する力をすべての人に提供すること
Twitter はこのミッションのとおり、自分のアイデアや有益な情報を一瞬にして世界中に拡散できるプラットフォームを提供しています。
09. Google
世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること
Google は検索を通じて人々の生活を向上させたいという価値観のもと、さまざまな Web 機能の開発を進めています。
10. マイクロソフト
Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)
マイクロソフトはその技術力を武器にしてデジタルトランスフォーメーションを先導することを目指しています。
11. ウォルト・ディズニー
象徴的なブランド、創造的な精神、革新的なテクノロジーを通じて、他に類を見ないストーリーテリングの力で、世界中の人々にエンターテイメント、情報、インスピレーションをお届けすること
言わずと知れたエンターテイメントの大御所、ディズニーは上記のワクワクするようなミッションを掲げて多角的な事業を展開しています。
12. イオン
お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。
イオンは「お客様第一」を掲げ、地域に根差した小売事業を展開しています。
13. ニトリ
住まいの豊かさを世界の人々に提供する。
ニトリはこのロマン(志)を社員一人ひとりに共有し、力を合わせて長期的なビジョン(店舗数増加や売上など)の実現に全力を尽くすことを目指しています。
14. コカ・コーラ
世界中をうるおし、さわやかさを提供すること。前向きな変化をもたらすこと。
コカ・コーラは丹精込めて作り上げた飲料を通じて、持続可能なビジネスの実現に取り組んでいます。
15. 良品計画
「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献する。
MUJI の店舗をはじめさまざまな事業を展開している良品計画は、生活に欠かせない基本商品を通じて人々の暮らしを支えています。
16. ザ・リッツ・カールトン
リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。(一部抜粋)
企業理念の浸透というテーマでいつも上位にあがるザ・リッツ・カールトンでは、ミッションステートメントを「クレド(信条)」という形でわかりやすくまとめて従業員に提示しています。
17. 資生堂
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
(美の力でよりよい世界を)
資生堂は美の可能性を広げて新たな価値を発見・創造することを使命としています。
18. ZOZO
世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。
総合ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などで知られる ZOZO のミッション。経営戦略やその他のステートメントにも遊び心とカッコよさが溢れています。
19. LINE
世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮める
今や知らぬ人はいない一大サービスとなった LINE は、2011年に誕生した比較的新しいサービスです。身近な人との絆を強くするコミュニケーション手段として今もなお成長を遂げています。
20. リクルート
まだ、ここにない、出会い。
より速く、シンプルに、もっと近くに。
広告や CM で一度はきっと目にしたことがあるこのスローガン。実はリクルートホールディングスのミッションです。個人と企業をつないでより多くの選択肢を提供したいという思いが込められています。
個人のミッションステートメントとは?
ここからは、個人事業主として活動している(または活動するつもりである)方はもちろん、今後のライフ / キャリアパスを考える上ですべての人が実践できる個人のミッションステートメントについてご説明します。起業しているかどうかに関わらず、自分の長期的な目標を定めるにあたって役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
意識したい「7つの習慣」
スティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』は、成功するための原則をわかりやすい説明でまとめたビジネス書で、リーダーシップの在り方に悩む多くのビジネスマンたちを導いてきたベストセラーです。この中でも「力を与えるミッション・ステートメントを作成し、それに従って生きる」旨が記されています。
「思っていることをつらつらと書いただけでは、ミッション・ステートメントにはならない。自分の内面を深く探り、自分の人生そのものの目的意識を明確にし、そこから湧き出るエネルギーを感じ取って書かなくてはならない」
『7つの習慣最優先事項(キングベアー出版、2016年)』より抜粋
同書の中でコヴィー博士は、本心にある目的と結びついたミッション・ステートメントを作成してこそ、達成したときの満足感も真に深いということを強調しています。
つまり、ミッションステートメントは単に目標を文章にしただけのものではなく、自分が人生で追い求める大きな目標や価値に手を伸ばすための人生の指針ともいえる存在なのです。
個人のミッションステートメントの作り方:6つのステップ
個人の場合は、まず自分自身の歴史を振り返ることからはじめます。以下の6つのステップに沿って、自分がずっと興味を持っていたことや今後達成したいことを見直してみましょう。
01.過去を掘り下げる
はじめに明確にしておきたいのは「あなたはどんな人か」ということです。これまでに影響を受けた本、子どもの頃の思い出などを振り返り、「どのような時間を過ごすことで自分は充実感を得られるのか」を探り、重要なキーワードをメモに残します。
02. 自分の価値観を明確にする
上記のステップ1で得られたキーワードをもとにして、自分の価値観を言語化します。
03. 自分の役割を知る
人の役割は決してひとつではありません。個人のミッションステートメントでは、親、子ども、会社員、パートナーなど、自分の役割ごとに目標を定めます。
04. ミッションを言語化する
自分の価値観、役割、そしてその目標から、何をミッションとするのかを明確にして文章にまとめます。
05. 見直す
文章化したミッションステートメントを「何を(WHAT)・なぜ(WHY)・どうやって(HOW)」の視点から見直し、必要に応じて調整します。完成したステートメントは日々目につくところに掲示しておきましょう。
06. 修正を繰り返す
ライフステージや仕事の変化などに伴って、個人的な目標も変わる可能性があります。1週間、1か月、1年ごとなど、定期的にミッションステートメントを見直す機会を設定しましょう。
個人ミッションステートメントの具体的な例
たとえば、あなたが現在 Web 制作会社に勤めており、今後 Web デザイナーとして独立したいと思っているとします。
子どもの頃からイラストを描いたり、アートを鑑賞するのが好きで、好きな作家の個展などには欠かさず出かけていました。既婚で子どもが1人おり、今後は子どもの世話や教育の時間も持ちつつ在宅で仕事をこなしたいと思っています。ただ、几帳面で仕事はすべてきっちりやる性格のため、自分のスキルを磨くことには妥協したくありません。
このような場合、個人のミッションステートメントとしては次のようなものが考えられます。
自分の成長のために常に新しいことに取り組む
デザインを通じて人の心を動かす
複数のことを両立するための創意工夫、改良・改善を怠らない
まとめ
これから起業しようと思っている方、ビジネスを興したばかりだという方は、サイトを作成してオンラインプレゼンスを高めることに加えて、ぜひ組織のミッションステートメントを考えてみてください。すでにビジネスを運営している方も、定期的にステートメントを見直し、現在の事業がそれに沿ったものになっているか戦略を見直すのも良いでしょう。
せっかくビジネスを行っていても、「何をしている会社・人かよく分からない」のでは意味がありません。ミッションステートメントを周知することで、自分や自社の存在意義を多くの人に知ってもらうことができます。企業の方向性を定めるだけでなく、広くサポートを得て事業を望む方向に拡大していけるよう、ミッションステートメントを通じてあなたがビジネスを行う理由をアピールしましょう。
編集者:Miyuki Shimose
ブログ コンテンツマネージャー