9月9日15 分

EC物流とは? 正しく取り組むためのノウハウを徹底解説

EC 事業を運営するには、物流の最適化は避けて通れない課題です。どんなに素晴らしい商品を提供しても、「届くのが遅い」「送料が高い」「梱包が不十分」では、顧客満足度が下がり、リピート率も減少してしまいます。
 

 
本記事では、EC物流の基本から、ノウハウまで、徹底的に解説します。今こそ、物流の最適化に取り組み、ビジネスの成長を加速させましょう。

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EC 物流とは

EC 物流とは、EC(電子商取引:electronic commerce)において商品の受注から発送までの一連の物流プロセスを指します。EC 物流の範囲は広く、商品の保管、在庫管理、梱包、配送、顧客対応などが含まれます。

顧客がショップで「購入」をクリックしたときから注文商品を受け取る瞬間、そして商品の返品を決めたときまで、EC サイトでの買い物に関連して生じるすべてのことが含まれます。
 

以下に、EC 物流ネットワークのながれをまとめました。

EC 物流のながれ

ネットショップで商品を販売するには、スムーズな物流の流れが必要です。ここでは、商品入荷から出荷までのプロセスを紹介します

01. 入荷・検品

まずは、製造者が発送した商品を受け取り、商品がオンラインで購入されるまで、物流倉庫で安全に保管します。商品をよい状態で管理するためには、適切なハードウェアとソフトウェアの導入、研修スタッフの採用、適切なワークフローの確立、配送業者との良好な関係維持、倉庫フロアの整理などさまざまなポイントを考慮する必要があります。

02. 在庫管理

在庫管理とは、適時、適切な場所に適切な商品を抱えるという目標を定めた上で、在庫数の管理と追跡を行うことです。欠品や原価割れを防ぐには正しい需要予測が必要となりますが、販売チャネルや対象とするオーディエンスが増えたり、新商品を追加したりした場合は実現が難しくなります。最近のネットショップでは各商品ページに在庫数を直接表示していることも多いため、(物理的な位置を含む)すべてのチャネルにおける在庫を正確に追跡するシステムが必要です。

03. 受注処理(フルフィルメント)

受注処理は、顧客が商品を購入した時に開始する業務です。注文商品を指定場所まで届けるにせよ、店頭受け取りを可能にするにせよ、商品の発送から配送状況の追跡までをきちんと同期しなければいけません。さらに、Eコマース商品の梱包、商品のラベリング、顧客への情報開示などに関してもさまざまな要因を考慮する必要があります。

04. ピッキング・梱包

受注処理が完了したら、出荷作業がはじまります。注文内容に基づいて正確に商品を選び出すためには、倉庫内の商品の配置を最適化し、バーコード化や商品の配置を最適化することで、ミス削減を徹底します。

そして、商品が安全に顧客の手元に届くように、適切な梱包材や方法を選択します。運用費用を圧縮するためにも、梱包材とダンボールのサイズは非常に重要です。梱包材の削減は、運送費用の削減だけでなく、環境に配慮している企業の社会的責任をアピールすることもできます。ほかにも、ブランドイメージを向上させるために、オリジナルのパッケージデザインや同梱物を工夫することも効果的です。

05. 出荷

最後に、商品の出荷です。ここでは、佐川急便、ヤマト宅急便、日本郵政などの配送業者との連携が重要となります。Amazon や楽天など、即日出荷が求められるEC物流では商品を集荷時間までに完全に梱包し用意することは簡単ではありません。ある程度、ビジネスが成長したら、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)に物流業務を外注することも検討しましょう。

事業主としては、出荷情報を正確に伝達し、配送状況をリアルタイムで追跡できるシステムを導入することで、配送ミスや遅延を防ぐことができます。また、顧客への通知も欠かせません。発送完了メールや追跡番号の提供により、顧客は自分の注文状況を把握しやすくなり、安心感を得られます。万が一トラブルが発生した場合でも、迅速に対応できる体制を整えておくことが信頼獲得につながります。

EC物流の課題と特徴

EC 物流の課題は、実店舗物流よりもはるかにプロセスが複雑だということです。これにはいくつかの大きな理由があります。

(1) 迅速な配送スピードが求められている


 
オンラインショッピングを利用するユーザーの 90 %以上が 3 日以内の配送を期待しており、30 %が注文当日の配送を期待しています。特に同日や翌日配送に対応しているかどうかは、ECサイト選びの重要な指標です。

(2) リバースロジスティクス(返品物流)対応が必要

EC サイトで注文された商品は、ほぼ5個に1個の割合で返品されています。返品を減らすために取れる方策はいくつかありますが、返品は Eコマースと切っても切れない部分です。リバースロジスティクスとは、返品された商品の受け取り、再販、処分といったプロセスを設定する業務のことです。質の高いカスタマーサービスを維持しながら利益を回収するための工夫が欠かせません。

(3) 越境ECへの対応が必要

海外への商品販売は大きなビジネスチャンスになります。しかし、関税の仕組みを知り、税や輸送費用を反映して配送料を調整する必要も生じてきます。越境 EC を検討・実践中だという方は、越境に特化したサードパーティロジスティクス(3PL)に物流業務を委託することがおすすめです。

(4) 無料配送 ・返品送料無料が期待されている

配送の速さとサービスに高い期待を寄せるだけでなく、オンラインでの買い物について、 ユーザーの66%が無料配送を期待しています。それだけでなく、無料で返品できることも大切です。PowerReviews 社の調査によると、無料配送と配送スピードを差し置いて、オンラインショッピングにおいて無料で返品できることは重要な条件となっています。

(5) 個別の配送先に少ない商品を届ける必要がある

積み荷や商品を載せたパレットをトラックで小売店舗に配送するのではなく、EC 物流では複数の小さな荷物を世界中に散らばる無数の宛先に配送する必要があり、その分調整が難しくなります。

(6) 複数商品の受注に正確に対応する必要がある 

オンライン注文では複数商品が一度に購入されることが多いため、注文された商品をすべて正確に調達し、予定通りに配送しなければいけません。一方、従来型の小売店舗では、買い物に来た人が棚に陳列された商品の中から欲しいものを選びます。

(7) 売上や需要の予測が立てづらい

小売店舗では店舗の場所と営業時間に基づいて貨物や需要の予測が立てやすいものの、Eコマースは年中無休。そのうえ、需要もしばしば変動することがあります。また、SNS で商品が突然『バズり』需要が激増する可能性もあります。そのため、万全の対応をする必要があります。

注文商品のフルフィルメント方法

顧客が本質的に求めているのは、無料で、速く、完璧な配送です。しかし、これには高いリスクが伴います。消費者の3分の2以上が、配送に関わる体験に満足できなければそのブランドでは二度と買い物しないと答えているためです。

このような中で EC 事業者として意識すべきポイントが、物流管理において「コスト(および効率)」と「管理」のどちらに重きを置くかということです。

一部の EC 物流ソリューションには高額な投資が必要ですが、その分、プロセス全体における裁量が大きくなります。一方、プロセスを管理する必要は少ないものの、第三者に確実なカスタマーエクスペリエンスの実現を委ねる必要があるソリューションもあります。

これに関わる主なオプションを以下で見ていきましょう。

01. 自己配送

在庫、フルフィルメント、カスタマーサービスを内製化することで、物流全体を円滑にコントロールできるようになります。業務としては、提携する配送業者の決定から、見栄えが良くブランドらしい開封体験を実現する梱包方法の管理まで多岐にわたります。しかし、中小規模のビジネスにとっては、大手配送業者や地主と契約交渉するのが難しい上、繁忙期には許容量の問題に直面するという懸念もあります。

実店舗を持っていれば、その場所を自社のフルフィルメントセンターとして利用することができます。あるいは、Apple などの大手ブランドでおなじみのとおり、既存の小売業者と提携して返品された商品の保管・発送・受け取りを行うこともできます。

02. サードパーティロジスティクス(3PL)

サードパーティロジスティクス(3PL)は、商品の倉庫保管と注文時のフルフィルメントを一手に引き受ける業者を指します。自社でコスト管理と配送の期待に応えることが難しいと考えている場合や、フルフィルメントを外注すべきタイミングであると実感しているのであれば、3PL はよい選択肢になるでしょう。

日々、契約している3PL の物流ハブやフルフィルメントセンターに在庫を調達して送る必要はありますが、配送業者との関係調整やピッキング・梱包・発送のプロセス管理に頭を悩ませる必要はなくなります。

3PL のパートナーを探すときは、以下の点を考慮しましょう。

  • ショップの商品を大切に取り扱ってくれそうな業者かどうか

  • どの程度のサービスに対応しているのか

  • 月間最小受注量に指定があるか

  • 梱包とブランディングをどの程度指定できるか

  • ビジネスの成長・縮小に応じて、倉庫の保管スペースを柔軟に調整することができるのか

  • 自社の資産(例:自社のトラックや倉庫など)を保有しているか、また資産の管理方法に基づく何らかの制限が設けられているか

  • 返品が生じた場合、その処理と仕分けをどのように行っているか

03. マーケットプレイスプログラム

Amazon やウォルマートのようなオンラインマーケットプレイスは、自社のフルフィルメントサービスとして3PL と同等のサービスを提供しています。その例としてもっともよく知られているのは Amazon FBA でしょう。Amazon FBA は、Amazon の航空機、トラック、パートナーからなる一団とともに、世界中にある185か所のフルフィルメントセンターを備えたサービスです。FBA は Amazon に出品している業者専用のサービスですが、Amazon はマルチチャネルフルフィルメント(MCF)というサービスも提供しています。

これは FBA を Amazon 以外のチャネルで販売している業者にまで拡張したサービスです。ただし、一部のマーケットプレイス(ウォルマートマーケットプレイスなど)は、Amazon の物流サービスの利用を明示的に禁じる代わりに、自社サービスの利用を促しています。当然のことながら、どのマーケットプレイスで販売しても、マーケットプレイス提供者の自社サービスを利用することで利益の大半(例:ランキング上位の獲得やバイボックスの表示など)を得る立場になります。

ご存じですか?Wix ストアなら、Amazon MCF と簡単にアカウントを連携できます。受注、在庫、サービスレベルを自動的に同期し、シームレスなフルフィルメントを実現します。

 

04.ドロップシッピング

ドロップシッピングは3PL とは異なり、販売者が販売する商品の在庫を事前に用意しておく必要がありません。その代わり、顧客がサイトから商品を購入するとメーカーなどに注文情報が転送され、その後商品が発送されます。そのため、物理的な在庫を管理したり保管したりする必要がまったくないのです。

一言でいえば、これがドロップシッピングという仕組みです。フルフィルメントにおける利便性が高いことはさておき、ドロップシッピングを利用すれば、製品ラインの追加と情報の設定がすばやく完了します。さらに、費用が発生するのは注文を受けたときのみのため、3PL と提携するよりも経済的にビジネスを行うことができます。

ただし、便利さの代償として、管理できる範囲は限られてしまいます。ドロップシッピング業者がすばやく、完璧に商品を発送してくれるということが頼みの綱となるため、ドロップシッピングのパートナー業者は丁寧に審査した上で選定する必要があります。Wix ストアなら、ドロップシッピングで人気の Modalyst とサイトを連携させて、数百万点の商品を販売することができます。Modalyst は、Wix の公式ドロップシッピングソリューションとして実証済みで、厳しく管理されています。安心のサービスと接続して、さっそく Wix ストアでドロップシッピングを始めましょう。

 

05. ハイブリッド

よく言われるように、どんな人にも合う完璧なソリューションはありません。あなたのビジネスに特有の要件を満たすよう、これまでに紹介した手法のいくつかを組み合わせて、単一チャネルへの依存を減らしましょう。

たとえば、注文の大半を社内で処理するが、特定の商品カテゴリをドロップシッピングで外注する場合もあるでしょう(ドロップシッピングの詳細はこちらのブログもご覧ください)。あるいは、特定の地域で3PL 業者を利用してクロスボーダー配送を行う一方で、店舗受取注文や地域内での自社配送を実施する場合もあるかもしれません。 

EC 物流を効率化させるポイント6選

01. オーディエンスが注目するサービスに力を入れる

若い買い物客、都心部に住んでいる人、もしくは食料品や生花を購入するユーザーはスピードを求めているかもしれません。ところが、顧客が地方に住んでいたり、あなたが家具等を販売していたりする場合は、当日発送サービスの需要がそれほど高くありません。

ですから、EC 物流においてオーディエンスの重視するサービスに力を入れようとするためだけに多くのことをやろうとしたり、超高速なサービスレベルを追求したりすることはやめましょう。配送に対する満たされるか分からない期待よりも、一貫性のある前向きなカスタマーエクスペリエンスの実現を優先することが重要です。

その上で、価格やおまけ、明確なブランディングなど、別の方法で価値を提示しましょう。

 

02.  幅広いオプションを用意し、可用性を確保する

社内で EC 物流を管理しているのであれば、1つのフルフィルメント拠点に業務を集中させるのではなく、小規模配送業者がもっとも利用しやすい複数の倉庫拠点間で商品を割り当てることになるでしょう。

 

03. 店舗を「在庫を集積する」拠点として使用する

パンデミック以降に現れはじめた「ダークストア」をご存じですか?公には開店しておらず、小さなフルフィルメントセンターとしてのみ機能している小売拠点のことです。従来の倉庫拠点と比べて、新店舗のための不動産はとてつもなく高額になるため、既存の店舗を(ほんの一部であっても)利用することで物流が優位に進みます。

なんといっても、顧客に近い場所で在庫を保管し、輸送時間を劇的に短縮できることがメリットです。速達サービスに頼る必要がない代わりに、ターゲット市場内に FSL を開設して顧客により速く商品を届けられるようになります。言うまでもなく、こうすれば店舗受取もカーブサイドピックアップも可能になります。

 

04. サステナビリティに注目

配送コストを抑えるため、配送に時間がかかることを長所として買い物客にアピールしてみましょう。最近行われたある調査によると、 消費者の86%が、きっかけがあればサステナビリティのために時間がかかる配送を受け入れたいと回答しています。

Amazon の「ゆっくり配送」プログラムはまさにこのシステムです。お急ぎ便を解除したプライム会員は割引を受けることができます。

ショップ独自でも、時間はかかるがその分安価でエコな配送オプションを考案し、顧客に同じようなサービスを提供することができます。これにより、物流コストが抑えられるだけでなく、地球のために資源を節約することにもつながります。

 

05. 事業計画に返品物流を組み込む

オンラインで商品を返品しようとしたら、ショップから「返品送料が高すぎるので商品を保管しておいてください」とだけ回答された経験がある人は少なくないはずです。

このような事態を避けるために、地域内の販売店を利用した合理的な返品手続きを構築しておきましょう。また、物理的な店舗がない場合は、近くのデパートなどで返品の受付を可能にする Happy Returns などのサービスを検討しましょう。

リセールやリサイクルプログラムを開発し、状態のよい商品を循環させることもできます。

 

06.適切なテクノロジーを活用する

物流やコスト管理、その他情報に基づいた決定について優位な立場を維持するには、自動化が不可欠です。ソフトウェア(倉庫管理システム やオールインワンの Wix の EC プラットフォームなど)を実装したり、倉庫ロボットを実用するにあたって、適切な技術を選ぶ必要があるのと同じです。

3PL に外注するとしても、自動化システムを活用することで配送時間を短縮できることを理解しておきましょう。直近では EC 業界に関わるトレンドが豊富で、物流業界に革命が起ころうとしています。

小規模ビジネスにおいては、業務を行う上で不可欠な部分の自動化と最適化を優先しましょう。たとえば、バーコードスキャナーとシステムを利用すれば、注文の精度が改善し、データ入力などの単調な作業を自動化してヒューマンエラーを減らすことができます。

EC 物流をマスターしてビジネスを広げよう

EC 業界やトレンドは変動する部分が多く、一度決めても適宜調整が必要であるという事実は否めません。しかしながら、多彩なツールとリソースが用意されているため、以前よりも作業しやすくなっています。

自由度の高いフルフィルメントオプションと簡単な返品システムを提供することで、スモールビジネスでもブランドの評判を高め、リピーターを獲得できるようになります。この機会にぜひ時間を作って、物流を正しく理解してください。

もっと詳しく:起業するための完全マニュアルや、ネットショップを開業するためのノウハウ、ネットショップに追加するべき決済方法の選び方に関する記事もぜひチェックしてみて下さい。

編集者:Miyuki Shimose

SEO & ブログコンテンツマーケター