2021年1月17日12 分
最終更新: 2023年6月4日
業界で大きな成功を掴むには、時間をかけて着実にオーディエンスを「育成」できるマーケティング戦略が不可欠です。ここで注目したいのが「ドリップマーケティング」といわれる施策です。
「ドリップ(しずく)」という名前から、静かに落ちてくる雨のしずくが頭に浮かんだ方もいるかもしれません。その名の通り、ドリップマーケティングは、チャネルを通じて、段階的に顧客と自動化されたコミュニケーションをはかるマーケティング手法のことです。ここではその中でもチャネルをメールに絞った「ドリップキャンペーン」に着目します。ドリップメールを利用したドリップキャンペーンは、一般的なメールマーケティングに比べてより高いエンゲージメントを生み出し、コンバージョンに結びつく傾向があります。
メールマーケティングツールを使用することで、ドリップマーケティングはすぐにはじめることができます。まずはこの記事を読み進めて、ドリップキャンペーンの具体例や活用方法、そして作成ステップを学んでいきましょう。
ドリップキャンペーンは、メールマーケティングで最も一般的に用いられるマーケティングオートメーションの一種です。事前に用意したいくつかのメールをある一定の期間にわたり順次配信し継続的に顧客へアプローチする手法です。
それぞれのメール配信のタイミングは、事前に定義してあるトリガー(要因)に基づきます。たとえば、ユーザーが定期購読を申し込んだ後に 1 通目のメールを、その 3 日後に 2 通目を送信するといった具合です。こうすることで、オーディエンスの行動に合わせてあなたのコミュニケーション戦略を適応し、適切なタイミングで「ドリップ」形式でメッセージを届けることができます。
ドリップキャンペーンの実施にはいくつかのメリットがあります。まず、急進的なキャンペーンで攻めるよりも、ユーザーの興味を徐々にかきたてていくことで時間とともにゆるやかに見込み客を醸成できるという点が挙げられます。ドリップメールはターゲットを絞ったユーザーに向けてパーソナライズされているため、単発の一斉配信メールよりもユーザーにとって説得力のあるものに成り得ます。結果として、この手法を利用することでメールの配信停止を軽減し、コンバージョンの向上が期待できます。
2 つ目のメリットは、ドリップメールがあなたのビジネスをオーディエンスの興味の 1 つとして最前線にとどまることを促し、オーディエンスの熱量を高めてくれるという点です。ドリップメールがあなたのブランドについて継続的な会話をもたらすことで、徐々に信頼を構築し、ゆるやかに購買ファネルへと誘導していくことができます。
ドリップキャンペーンを作成するための最も便利な方法は、あなたのウェブサイトから直接行うことです。そうすることで、サイトのデータからメールマーケティングキャンペーンまで、あなたのビジネスに関するすべての情報をひとつのプラットフォーム上で管理・把握することができます。
Wix を活用してドリップキャンペーンを開始するには、まずダッシュボードのサイドバーにあるメニューから Ascend ビジネスツールにアクセスします。そこから顧客管理にカーソルを合わせて「オートメーション」をクリック。マルチアクションのオートメーション機能を使用すると、1 つのトリガーに対して最大 10 件のターゲティングに基づいたメールをひと続きで配信するよう設定できます。
ドリップメールの自動配信は、定期購読を申し込んだ顧客へのフォローアップや、顧客がカートに置き忘れたままの商品に対し購入を促したい場合などさまざまなシーンで活用することができます。以下、ドリップメールの作成ヒントを含む様々なドリップキャンペーンの種類を紹介します。
ウェルカムメール:ユーザーの新規登録、定期購読、無料トライアルの申し込みといった行動をしたユーザーにウェルカムメールを送信。まずはユーザーのアクションに対するお礼を伝え、自社商品の紹介やお役立ち情報を提供してポジティブな第一印象を残しましょう。
リードナーチャリング(見込み客醸成)メール:商品やサービスの購入に向けた一連のリードナーチャリングメールで見込み客にアプローチ。たとえば、あなたの専門知識を用いてユーザーを育成したり、無料トライアルやカウンセリングの提供といった場面で使うことができます。ユーザーがマーケティングファネルの下層へと進むにつれて、ウェビナーへの登録やアプリのダウンロードなど、自社商品・サービスを利用してもらうための戦略を検討してみましょう。
ユーザーエンゲージメント:一度サイトを訪れたユーザーに再訪を促すメッセージを送信。たとえば、メルマガを定期購読しているもののあなたのサイトをしばらく訪問していないユーザーに対して「最近はいかがですか?」といったグリーティングメールを送ったり、より多くの商品を閲覧してもらうために「あなたにおすすめの商品」といった形で興味がありそうな商品ページへ誘導するのも良いでしょう。
カゴ落ちメール:カートに商品を入れた状態で購入に至っていないユーザーから関心を取り戻すためにリマインダーを送信。カゴ落ちはネットショップにとって大きな問題であり、その割合は平均 80 % に迫る勢いです。そこで、ドリップメールを活用することで、ユーザーの購買意欲を再燃させる効果が期待できます。これらの顧客を対象に強力なオートメーションメールを送信し、売上増加に繋げましょう。
更新通知メール: 定期購入型の商品やサービスを提供している場合、顧客に更新の通知を送信。自動更新の場合は事前にメールを送信して、アカウントに課金される旨を知らせます。自動で更新されない場合は定期購入の期限が切れる旨を通知して、サービスへの再登録を促すドリップキャンペーンを作成しましょう。
購入確認メール:商品を購入した顧客への感謝の気持ちに加え、継続的なエンゲージメントを喚起するためのドリップメールを作成。たとえば、お礼メールを送った後に製品の新機能やアクセサリを紹介するドリップメールを配信することで顧客の再エンゲージメントを促します。
段階的なチュートリアル:簡潔なチュートリアルやお役立ち情報などあなたの知識を共有し教育的な内容を配信することで、サイトへのトラフィックを促す。関連性のないメールを順次送信するよりも、統一された内容を配信することであなたのビジネスブランドへの興味とエンゲージメントの喚起に繋がります。SEO のチュートリアルや SNS マーケティングのヒントなど、解説型のブログ記事をいくつかのパートに分けて「短期集中型コース」のような形でメール配信するのも良いでしょう。
ドリップキャンペーンの概要をつかんだところで、早速キャンペーンを作成してみましょう。ステップは以下の通りです。
明確な目標を設定する
ターゲットオーディエンスを決める
メールの通数と配信頻度を考える
説得力のあるコンテンツを作成する
ドリップキャンペーンを開始する
戦略をさらに改善する
新しい見込み客を獲得したい、バズを起こしたいなど、ビジネスで達成したい目標は山ほどあることでしょう。まずはそれを整理して、ドリップキャンペーンを実施するための明確なゴールを設定することが大切です。
ゴールを定めるために、まずはドリップキャンペーンを行うことでオーディエンスに何をしてほしいかを考えてみましょう。商品を購入してほしいのか、無料トライアルに登録してほしいのか、もしくはウェブサイトに再訪してほしいのか…
具体的な目標を決めるのが難しい場合、以下のリストの中から一番近いものや響くものを見つけてみましょう。
商品の宣伝
売上の獲得
ブランド認知の確立
エンゲージメントの向上
新規アカウントの開設や新規登録の促進
目標が定まったら書き留めておきましょう。ここから、ドリップキャンペーン全体のロードマップを描いていくことになります。SMART の法則(目標設定の有効度を確かめる手法の1つ)なども参考にして、ビジネスゴールを絞り込んでいきましょう。
メールマーケティングが誰にでも通用する万能な手法というわけではありません。目標を継続的に達成するには、読者にとって身近で関連性の高いメッセージを発信していく必要があります。そのため、ターゲット市場の特徴に応じてメールの内容を調整しなければいけません。
これは「マーケットセグメンテーション(市場細分化)」と呼ばれ、アプローチするオーディエンスを共通の特性に基づいて異なる顧客タイプに分割していくプロセスを指します。ここでいう特性は、ユーザーの属性データからサイトでの行動、購買履歴など多岐にわたります。この情報に基づいて、どのキャンペーンをどのユーザーへ送信するかを決めるトリガーを作成します。
たとえば、カゴ落ちが発生した場合に送信するトリガーを作成するとします。この場合、対象のユーザーセグメントは「24 時間以上カートに戻ってきていない人」というように指定できます。このセグメントに対して、カートの商品を購入してもらうという目的に向けたドリップメールキャンペーンを作成するのです。
もう 1 つの例として、ニュースレターを新規購読したユーザーに対するトリガーを挙げます。ここでのセグメントは「新規購読ユーザー」で、このカテゴリーに該当するユーザーにウェルカムメールとして送信することができます。
さて、ドリップメールを送信する目的と、メールの送信対象となるユーザーグループについて把握できたかと思います。ここからは、ドリップメールはいくつ作成すべきなのか?どれぐらいの頻度で送るのか?といった点を一緒に考えていきましょう。オーディエンスの興味を引いてエンゲージメントを高めたいと望む一方、多くのコンテンツを送ることで受け手側に面倒に思われたくない…と迷いが生じるところでもあります。
ドリップキャンペーンは、3 日 ~ 2 週間の間隔を空け、4 ~ 10 通のメールで構成するのが効果的だといわれています。最初の数通は、少し間隔を詰めて(3 ~ 4 日おきなど)送信すると、トリガー直後のユーザーとコミュニケーションがはかどるでしょう。その後は少しペースを落としてメールを送信することで、受信側の負担を軽減できます。
マーケティングでは多少なりともベストプラクティスは存在しますが、これさえ守れば絶対成功するという魔法はありません。ドリップキャンペーンを何通か送信したあと、データを分析し、手応えが得られるまでメールの通数とタイミングを調整していくことが大切です。
ドリップキャンペーンの目標の定義、ユーザーセグメントとトリガーの設定、メールのタイミングと頻度について学んできました。ここからはいよいよ、コンテンツの作成に入ります。
読者にとって有益で興味を引く内容か、あなたが読者に期待する行動に誘導できるか、といった点を念頭に置いてメッセージをメールにしたためましょう。以下、効果的なコンテンツを作成するためのコツです。
件名でユーザーを惹きつける:ドリップマーケティングキャンペーンを成功させるための第一歩は、ユーザーにメールを開封してもらうことです。件名を一目見て読みたくなるような魅力的なタイトルでユーザーを惹きつけましょう。
ユーザー個人に向けたメッセージを発信する:ユーザーは、パーソナライズされた「自分宛」のメールにより興味と関心を示すものです。オーディエンスのセグメントをもとに、どのようなメッセージやプロモーションがユーザーを惹きつけるか判断して、それに応じたドリップキャンペーンを作成しましょう。
一貫したブランディングを意識する:ブランドも人と同じく個性があるものです。メールを通じて記憶に残るブランドアイデンティティを構築し、読者にあなたのビジネスをより深く知ってらいましょう。ユーモアを交えたコンテンツ、楽し気な印象の語りかけ、プロらしさが伝わる信頼できる文章、その間を取ったニュートラルなトーンなど、メールの表現方法ひとつでブランドの個性を出すことができます。
簡潔にまとめる: 新しい情報を詰め込みすぎたり、あまりにも多くの文章量を載せるなど、読者へ負荷を与えないようにしましょう。スペースや改行を十分に挿入した読みやすいレイアウトで、簡潔かつ思いが伝わる内容に仕上げることでメールを読んでもらえる可能性が高まります。
価値を重視する:ビジネスの詳細やサービスの機能を淡々と説明する内容は避けましょう。その代わりに、商品やサービスが「どのように」ユーザーにメリットをもたらすのか本質的な価値を強調することが大切です。
切迫感をかきたてる: あなたが期待する行動を先送りされないためにユーザーの心を動かす工夫を施しましょう。「1週間のみ有効」のクーポンを発行するなど、すぐにアクションを起こしたくなるような期限付きの特典を活用するのも有効です。
CTA を配置する:それぞれのメールに CTA(行動喚起)を配置してあなたの最終的な目標へと読者を誘導しましょう。「今すぐはじめる」「ダウンロード」「新規登録」などの直接的なアクションにつながる文言で効果的なCTAボタンを配置します。
期待感を盛り上げる: メールの結びには、読者の期待感をさらに高めるような内容を付け加えましょう。「最後に」や「追伸」といった形で、あなたが今後予定しているホリデーセールやユーザー参加型のコンテストについて触れてみるのも良いでしょう。
メールを作成し、戦略の組み立てが完了したら、さっそくオーディエンスにメールを送信しましょう。ドリップメールの送信プロセスは自動化されるため、最初のトリガー(例:ニュースレターを購読後に送信)を決め、それに続くメールの配信間隔を指定するだけで設定は完了です。この設定はあなたの Wix アカウントのダッシュボード > オートメーションから直接行うことができます。
メールマーケティングに限らず全てのマーケティングキャンペーンの成功は、より良い結果を出すための戦略を継続的に最適化できるかどうかにかかっています。もしも、ドリップキャンペーンで思うように目標を達成できなかった場合、オーディエンスのセグメントを編集する、メッセージを調整する、メール配信のタイミングを変更するなどできるところから最適化を進めていきましょう。
たとえば、メールの開封率が低い場合はメールの宛先リストを整理したり件名を書き直す、コンバージョンが低い場合は CTA をさらに強調してクリックへの誘導を促すなどの対策が考えられます。キャンペーンの結果を分析し、新しいキャンペーンをはじめる際に前回の学びを取り入れて継続的な改善を図っていくことが重要です。
ライター: Wix Team